忘却の国境
忘却の国境
2024
2024
岩絵具、アクリル、キャンバス、パネル
岩絵具、アクリル、キャンバス、パネル
自己の輪郭は複雑でその境界は身体の皮膚のように存在しません。
今回の作品では、空虚な自己の輪郭を国境の境界線の複雑な概念に重ね合わせて心象風景を描きました。
日本のアーティストで図学の研究者である佐藤紀子は、ここ数年、日本とフランスで絵画を発表しています。彼女は、偶然に遭遇し、感情を揺さぶられた風景の記憶を拠りどころとして作品を制作しています。記憶は、かつて身体に起こった様々な感覚をランダムに思い出させます。呼び起こされた感覚は、有機的な線と色に変換されるとともに画面上に集積されます。風景が身体に与えた感覚は、視覚的に新たな感覚を生み出します。
2022年、佐藤は『フェルメールの絵画空間:図学から読み解く』(美学出版)を著しました。それは、17世紀を代表するオランダ黄金期の画家、ヨハネス・フェルメールの絵画の空間に秘められた幾何学的な要素を発見しようとする試みです。フェルメールは、サイズの異なるキャンバスを用いており、類型的な印象を鑑賞者に与えるような構図を採用しました。分析により、それらの構図には、かなり正確な透視図法に黄金比が複雑に組み込まれていることが導き出されました。画家が、意図して、類型的な構図を丹念に練り上げたことは明らかです。
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