Artist Statement

       日本のアーティスト兼図学の研究者である佐藤紀子は、日本とフランスで絵画を展示してきました。

 

フランスの美術雑誌「ユニベール・デザール」の編集主幹であるジョセ・ティボは、彼女の作品について次のように述べています。「極限まで推し進められた、明快でいながらも幻惑させるようなシンプリシティにより、目に快い楽しみを与えてくれる。装飾的なモチーフと幾何学的な線、図形が調和し、面と領域によって支持体の上に分配され、観る者の目に不思議な平穏をもたらす。」(第36回パリ国際サロン個展部門、個人寸評より部分抜粋)

 

2022年、佐藤は『フェルメールの絵画空間:図学から読み解く』(美学出版)を著しました。それは、17世紀を代表するオランダ黄金期の画家、ヨハネス・フェルメールの絵画の空間にある幾何学的な要素を発見しようとする試みです。彼は、サイズの異なるキャンバスを用いましたが、類型的な印象を鑑賞者に与えるような構図を採用しました。その構図では、かなり正確な透視図法と黄金比が複雑に絡み合っていました。画家は、意図して、類型的な構図を丹念に練り上げたことが明らかになりました。

 

このような研究を通して、佐藤は、画面を分割するために厳格なルールを用いることにしています。分割された平面は、独立した平面図形でありながら、画面全体として調和するように機能しています。幾何学による画面の統制は、規律に従うことを意味します。部分的であっても、それは、精神に安らぎを感じる秩序を画面にもたらします。また、箔で表現された矩形は、日本人の空間に対する独特の感覚ー空中に浮遊したようなーに起因しています。また、書画のような線の表現には、「生死一如」という禅の思想が込められています。